身近な相続・遺言相談室 第4回「遺言」
今回は相続手続きで最優先される「遺言」についてです。
民法900条で相続人と相続分が規定されていますが、遺言では遺言者が自分の財産を誰にどんな割合で残そうが自由に決められます。生前の意思が死後も尊重されるからです。
しかし最優先されるといっても遺言書があれば絶対にその通りに進むかというと、残念ながらそうはまいりません。つまり遺言を書いたからといって、絶対に安心できるかというと、そうとは限らない場合があるのです。何故かと言いますと、「遺言」には遺言者の感情が大きく表れます。ここがポイントなのです。
例えば自分に尽くしてくれた方、晩年お世話になった方等にはなるべく多くの財産を残してあげたいと誰もが思うところでしょうが、あまり極端だといくら遺言者の意思とはいえ他の相続人と争うことにもなりかねません。ですから生前贈与も上手に活用し、法定相続人には最低限の確保、つまり遺留分を考慮するということが余計な争いを回避します。
さて遺言書の形式は法律で定められており、主なものは「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」があります。公正証書遺言は公証役場で公証人と証人二人以上の立合いの下に作成され、遺言書の原本は公証役場に保管されますので、費用はかかりますが、自筆証書遺言のような紛失や改ざんの心配はありません。また家庭裁判所の検認も不要ですので相続人や受遺者にとっては公正証書遺言の方がありがたいでしょう。ただ自筆証書遺言は気軽に書けるという利点もあり、遺言内容や相続人と受遺者の状況にもよりますので、どの形式で遺言するのが良いのか、役所の無料相談などで専門家のアドバイスを受けてみるのも良いでしょう。
身近な相続・遺言相談室 代表相続法務指導員 川島幸雄